お知らせ

2020-03-22 15:30:00
宮司の月便り(3月)

 

 雛祭りの季節を迎え、ひな人形を飾ったご家庭も多いことと思います。特に女児が誕生し、初節句を迎えるご家庭では、準備などに忙しかったことと思います。桃の花を飾り、草餅をお供えする風は、各地にあるのではないでしょうか。桃は、邪気を払うとされ、その実は意冨加牟豆美神(おおかむずみのかみ)という神名があり、人々が苦しみ悩む時に助けてくれるという。ひな人形のル-ツは、禊祓に使用した形代(かたしろ)の人形(ひとがた)であったといいます。その名残で「流し雛」の風習を残している地域もあります。

 

 雛祭りと言えば、内裏雛を上段に飾り、三人官女、五人囃子などを配して宮廷の様子を再現しています。このようになったのは、日本独自の発展がありました。私たち日本人は、古くから皇室に憧れてきました。その結果、世界に類をみない「雛祭り」という年中行事を生んだのです。源流は、農村社会にあった疫病の流行る春先のお祓い行事でした。それを女児の成長を祝う行事へと変化させていったのです。宮廷の華やかな婚礼の様子の中に、豊作や子孫繁栄の願いも込められています。

 

 

 

 3月に入っても新型コロナウイルスの猛威は収まっていません。現状では世界中が対策に必死で当たっている状態です。近年、流行り疫病でこれほどの混乱に遭遇したことはありません。日本のみならず世界中が、未知のウイルスと戦っている状態です。1日も早く終息し、平穏な日常生活に戻って欲しいところです。

 

 桃の節句に続いて、桜の季節を迎えます。今年は暖冬でもうすでに関東地方では開花宣言があり、まもなく満開になろうとしています。かつては、4月の入学式の頃に満開になっていましたから、半月も早くなっていることになります。古代律令国家の時代、今から1,300前、桜の花が散る頃、鎮花祭(ちんかさい・はなしずめのまつり)と云う祭りが行なわれていました。大和盆地では今も行われていると言います。

 

 花が飛び散るときに、疫神が分散して流行り病をなすので、それを鎮め抑えるために、この祭りを行うのだと、説明しています。改めて、古代の人々の心に触れる思いがします。

 

お花見の習俗の根底には、疫神に対する恐れがあり、この神を鄭重に祭ることが必須だったのです。流行り病さえなければ、いつも通りの楽しいお花見なのですが、今年はそんなわけに参りません。

 

学校は休校、卒業式も中止、様々な行事催しは自粛、不要不急の外出も控えるようにとの要請もあります。それによって既に経済活動に大きな影響が出ています。先祖たちが何度も乗り越えてきた危機体験、周到な予防で私たちも乗り越えて行かなければなりません。春先に何度もお祓いを繰り返してきた、先祖の心に立ち返り、新型コロナウイルスによる感染症の撲滅を改めて祈りたい。