お知らせ
5月5日は、疫神祭です。例年ですと子供たちが神社に集合して、子供たちが主役になって、お祓い行事を行います。今年は、新型コロナウイルスの感染症予防のため、子供たちへの呼びかけを行わず、氏子総代・祭事係・獅子舞保存会の方々のみでの疫神祭となりました。
午前8時に神社に集合し、境内の掃き掃除を行いました。新緑の境内は、落葉はありませんが、新しい芽を保護していたカバーの部分が落ちてくるので、掃き掃除も大変です。雑草も次々に生えてくるので、雑草を引き抜きながらの作業となります。
その後、境内に生えている真竹5本を伐り、ここに疫神除のお札を挟み、「フセギ」を作成します。これは祈祷をした後で、集落の境に立てて、外部から悪疫の入り込むのを防ぐのです。
午前9時、疫神祭を執り行い、その後獅子舞保存会の皆さんの奉仕で獅子頭を着け、行列を作り太鼓をたたきながら、地区内を一巡してお祓いを行います。例年ですと獅子頭をかぶるのは子供たちの役目で、お供の子供たちもたくさん集まり、にぎやかな声でお祓いをするのですが、今年は大人だけで、行事を行いました。
神社を出発した獅子舞の行列は、集落内の南側の路地を巡り上廓(かみぐるわ)、中廓、道下廓、下廓と順に巡って、集落の寺院である梅岩院に到着し、休憩をしました。その後、星宮小学校の脇を通り、一路神社に向かって、復路は集落の北側の路を通って進みます。ここには新しく建てられた住宅が多く、垣根越しにきれいな花々が咲いているのが見えて、一年で一番いい季節を実感できます。
私の子供の頃、おそらく60年位前までは、集落の一軒一軒の家の中に入り、お祓いをしていました。その頃はどこの家も土間があり、戸口(とぶぐち)と呼ばれた入り口から入り、竈のある台所まで清めて、浄めのお札と五色の幣(獅子のたてがみ)を配っていました。それ以前は、土足で座敷まで上がり祓い清めたと聞いたことがあります。
今はどこの家も改装されて、きれいな玄関があり、家の中に上りますので、各家々を巡る方式は、改められてすでに60年も経過していると思います。
午前11時には、獅子舞の行列は神社に戻り、恒例の通り獅子舞を神前に奉納してすべての行事を終えました。例年よりだいぶ時間短縮となりました。
神社の拝殿に明治20年に奉納された絵馬があります。疫難退散感謝の文字が見えますので、前年流行したコレラに罹らなかった御礼感謝を込めたものでした。コレラの流行は、幕末からたびたびあったようで、致死率も非常に高く、「コロリ」と呼ばれました。明治19年の流行は、全国で10万人もの死者が発生したといいます。おそらく当時も疫神祭を、村中あげて熱心に行ったのだろうと想像します。おかげで村内に罹患者は無く、御礼の絵馬奉納になったのだと思います。
今回の新型コロナウイルスの感染症の予防策は、世界中で実施され、通常の経済活動や生活が送れないという事態にまで至っています。これまで人類は、こうしたことを何度も乗り越えてきたに違いありません。明治20年の奉納絵馬はそのことを教えてくれています。
本年の疫神祭は、恒例の行事を略して行いましたが、祈りの深さが違いました。恒例の行事ではありますが、田植え前のこの時期に、疫神が災いをもたらす、実際にそのようなことが数多くあったのでしょう。そうした先祖の体験にも思いを馳せることが出来ました。
新型コロナウイルスの猛威はまだしばらく続きそうです。1日も早く蔓延が防止され、終息されることを祈りたいと思います。氏子崇敬者の皆様には、健康に留意され、感染予防を徹底されて、息災にお過ごしくださいますようお祈り申し上げたいと思います。
また、感染防止のため御尽力されています政府地方公共団体、懸命に治療に当たっておられる医療関係者、様々な分野で社会生活を維持するために働いている方々に感謝申し上げたいと思います。